内部監査手続書を作成するにあたってのポイント
内部監査の実務的なツールのなかに「内部監査手続書」というものがあります。内部監査手続書とは内部監査を行うに当たって具体的にどのようなことを行うのかを記載した重要ツールになりますが、会社によっては内部監査チェックリスト、内部監査指示書、内部監査手順書等、呼び名は様々です。
内部監査手続書は経営層に承認された内部監査計画に基づき作成されることになりますが、内部監査手続書に対してあまりこだわりをもって作成されていないケースもあるのではないでしょうか。
こだわりをもって内部監査計画を立案していたとしても、こだわりをもたずに内部監査手続書を作成していなかった場合、せっかくの内部監査計画が内部監査実施に反映されない可能性もあります。その結果、計画上はリスク・アプローチ(リスクが高い項目については監査資源を多く投入し、リスクが低い項目については監査資源を少なく投入する)を徹底したにも関わらず、重要なリスクに対して内部監査を実施できなかった、重要でないリスクに対して過剰に内部監査を実施してまった等の弊害が起こり得ます。
内部監査手続書の重要性
内部監査手続書は内部監査の成否を分ける重要ツールになります。内部監査手続書が内部監査計画を適切に反映していない場合、内部監査計画通りに内部監査が実施されることは難しいといえます。なぜなら、内部監査担当者は内部監査手続書をみながら内部監査手続を実施することが通常であり、内部監査手続書に記載されていないことを要求することはあまりにも酷であるためです。そのため、ポイントを絞った内部監査手続書を作成することが重要になるのです。
また、内部監査責任者(又は内部監査責任者が指名した者)は内部監査手続書をレビューし、内部監査計画を反映したものであることを確認する必要があると考えられます。
内部監査手続書作成にあたってのポイント
実施すべき重要な手続きが漏れなく記載されていること
内部監査手続書を作成するにあたっての第一のポイントとして、実施すべき重要な手続きが漏れなく記載されていることがあげられます。ここで、重要な手続きとは、内部監査計画において識別した重要なリスクに照らして適切な内部監査項目が選択されているか、という視点と、選択した内部監査項目を検証するために適切な内部監査手続が選択されているか、に分けて考えることができます。
第三者がみて内容が理解できること
内部監査手続書を作成するにあたっての第二のポイントとして、内部監査手続書作成者以外の第三者が見て内容を理解できることがあげられます。第三者とは、内部監査責任者、他の内部監査担当者などがあげられますが、重要なポイントとしては現時点のみならず、将来の内部監査責任者・内部監査担当者も含まれる点です。毎年内部監査手続書を一から作成するのであれば良いのですが、通常は来年度以降も引き継ぎ同じ内部監査手続書を使用するものと考えられるため、(口頭等により)現時点のメンバー間で理解されているだけでは十分とはいえない可能性があります。また、内部監査責任者・内部監査担当者の異動・退職等により、内部監査手続書の趣旨や内容について誰も分からなくなってしまう、といった状況に陥ることを防ぐことにも役立ちます。
経済性(コストをかけ過ぎないこと)
内部監査手続書を作成するにあたっての第三のポイントとして、経済性(コストをかけ過ぎないこと)があげられます。内部監査手続はリスク・アプローチという概念に基づき作成される必要があるため、本来であれば画一的な内部監査手続書のみを作成することは困難であり、状況に応じて内部監査手続を追加・削減することになります。そのため、リスク・アプローチに柔軟に対応できるよう、内部監査手続書の体系・構造を工夫することが必要になります。なお、経済性を重視するあまり、画一的な内部監査手続書のみを作成することを選択したり、毎期同じ内部監査手続書を一律に用いて内部監査を行ってしまうと、第一のポイントにあげた「実施すべき重要な手続きが漏れなく記載されていること」が守れなくなってしまう可能性があるので注意が必要です。
以上、内部監査手続書を作成するにあたってのポイントを三つほど簡単にあげさせていただきましたが、企業の経済環境、ビジネスモデル、組織構造、内部監査の目的、内部監査の複雑性等、様々な要因によって内部監査手続書作成するポイントは他にもあげられる場合があります。
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